ポール・オースター「ナショナル・ストーリー・プロジェクト ? (新潮文庫)」

アメリカでポール・オースターのラジオに寄せられた、一般の人々のお話を集めた本。1巻はこちら
2巻は、『見知らぬ隣人』、『戦争』、『愛』、『死』、『夢』、『瞑想』というテーマからなっている。1巻に比べると、人と人の関わり合いに関する話が多い。それは偶然の出会いだったり、友情だったり、予期せぬ別れだったりする。それらを読んでいて思うのは、「アメリカの人々から」寄せられた話ではあるが、結局普通に暮らしている人間の経験から紡がれる話には、どこの国の人が読んでも違和感なく受け入れられる共通の感情があるな、ということだ。たとえば、『戦争』の話はおそらく日本人がするものより明るさがあるように感じたりはするものの、何かを嫌だと思う気持ちや偶然に驚く気持ちは、きっとほとんど変わらない。大統領が変わって状況も変わるだろうが、結局のところ世界から何かと複雑な感情を持ってみられるアメリカの、普通に生きる人間の物語。おかしく思ったり、哀しさを覚えたり、いろいろな思いが浮かびながら楽しく読めた。