ポール・オースター「ナショナル・ストーリー・プロジェクト ? (新潮文庫)」

多くの市井の人々がポール・オースターに向けて寄せた実話の数々をまとめた物語集。柴田先生訳による、ゴールデンコンビとも言える二人の仕事によって、一般の人の数多くのお話が、なんとも見事にオースター風味の短編になっている。
『動物』、『物』、『家族』、『スラップスティック』(笑い話)、『見知らぬ隣人』という5つのテーマに関する実話が、正月のゆるい頭にほっこりと心地よい。事実は物語よりも奇なり、という言葉が実感を持って感じられる。…むしろ、事実でも物語でもどちらでもいいか、という気分で読める。