本田直之「レバレッジ・シンキング 無限大の成果を生み出す4つの自己投資術」

話題の(といっても少し前の)ビジネス書を古本屋で見つけたので読んでみた。
リバレッジとは、投資の分野でよく出てくる言葉だ。資金の何倍ものお金を動かせる信用取引などで、わずかなお金を用いてテコのようにどんどんお金を増やす、という意味だと理解している。
こういった考え方は、自分を成長させることにも使えるだろうとしたのが著者の実にうまいところだ。確かこの本の他にも「リバレッジ」とついた本は出ていたと思うが、自分を向上させるための努力、自己投資に振り向ける時間の大切さを実にうまく言い表しているものだと思う。実は莫大なリターンを生むかもしれないこのわずかな時間を惜しむことで失われるチャンスは大きいことはとても納得できる。
『リバレッジ』の考え方が出てくる全てのテクニックにおいて重要なわけでもないし、『無限大の成果』は言いすぎな気もするが、この言葉一つで本のエッセンスをうまくまとめたところに、この本の成功があったのだろう。
ゴールを設定すること、あらかじめ時間を制限して余裕時間を生むこと、仕組みを作って習慣化すること。多くの人が言っていることが新たな文脈で頭の中に入ってくる。人は面倒くさがりで、あれを勉強しよう、これをはじめようと思っていてもできないという経験は誰もがする。そのときに、あらかじめ少しの時間を、「それを習慣化するような時間割(仕組み)を作る」ことに割くことが大事なのだよ、という指摘。そしてその、あらかじめ時間を割いて成果を大きくする、という考え方が知識を増やそうとする際にも、人脈を作る際にも重要なのだということ。こうした言い古されたようにも思える重要な指摘は、この本ではリバレッジという言葉とともに、読むものの意識に深く染み込む。
読んでやる気になるのもビジネス書の効果だが、実際にやらなければ意味がないのだ。「読むだけで絶対やめられる禁煙セラピー [セラピーシリーズ] (ムックセレクト)」をぱらぱらめくっていても思ったが、うまく書かれた本は、「実際にやらせる」ことをどう意識づけするか、ということに長けている。そしてそれは著者が、「なぜすぐにできないのか」という心の奥底を、自身の過去の経験などに照らして客観的に掘り下げているからこそできることなのだ。
人に何かを教えるときにも、教える側が、「なぜできないのか」を一度再体験しておくと、教えられる側にとてもよくわかってもらえる。何かを書いて人に伝える際にも、「なぜわかりにくいか」の掘り下げが必要だ。
そういったこともまた、この本から考えてしまった。少しいつもビジネス書を読んでいるのとは違った読み方を結果的にしてしまうあたりも、この本の効果なのかもしれない。