大谷和利「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス (アスキー新書 048)」

言わずと知れたアップルの総帥、ジョブズさんの紹介本。ネットでいろいろ記事を見たりしているが、実のところ彼がどういう人生をたどってきたのかあまりしらなかったので、手に取りやすそうな一冊を読んでみた。
実際、タイトルからしても、ジョブズのことなどまったく知らない、でもiPodなら知っているよ、という人くらいを対象にしている。中身もうまく絞ってあって、彼のことを知るための導入にちょうどいい一冊だったと思う。
こういう紹介本は多数あるのだろうけどこれを選んだ理由は、サブタイトルの『現場介入型ビジネス』である。今の職場とボスのスタイルがそういうものなので、アップルではどうなのか覗いてみたかった。もちろん、そこまで深く掘り下げた本ではないが、少なくともこの本を読んでいると、自分のボスが持っている、ジョブズと似た傾向について思わざるをえなかった。当然だが、デザインセンスだとかカリスマ性だとかその立っているフィールドの広さは比べようもない。でも、部下からすると面倒なほど細部にまで妥協せず自分の求めるものを作りたがるところや、部下に細かい説明を求め、その中で部下に現状把握と問題点の洗い出しをさせようとするところとか、成果物を発表するときのタイトルや売り込み方を綿密に考えるところとか、そのエッセンスが非常に似ているなと思うところが多かった。
トップだからといって全てを把握するのは難しい。だからこそ、ビジネスを展開していく上で肝となるプロジェクトや、それを発表するときのやりかたについては、部下に面倒だと思われるくらいに介入しようとする姿勢が必要なのだろう。
逆に、アップルが正規のプロジェクトと並行して走る裏プロジェクトによって危機を乗り越えたり、新たなステージへとビジネスを展開させてきた例もこの本では紹介されていて、これも、できる会社はそうなのだろうなと思った点の一つだった。現場に介入できないレベルで行われる動きこそが未来を開く場合がある。そしてそれをうまく拾い上げるのもまた、トップの力である。
薄い中にもいろいろと考えることのある一冊であった。