「ミリオンダラー・ベイビー [DVD]」

いまさら見てみる。単なる成功物語ではなかったのだと見てはじめて知った。映画をやっていたときの売り文句からしても、そりゃそうだ、なのかもしれないがちょっとびっくり。
貧乏でもなく傷ついてもいない、不自由なく育ちストイックでもない人間なんてつまらない。あえて不幸になる必要なんてどこにもないけど、そういう生き方を余儀なくされる人もいる。そんな状況でも、瞬間でも輝いて生きようとする、30過ぎの女ボクサーの眼の力強さったらない。
頑固で、駄目だ、負けるぞ、とわかっていても続けてしまう、やってしまうのがボクサーだ、と語られる言葉がある。人生においてもそういうふうに生きてしまう不器用なひともいる。そういう人にとって、人はさておいて『常に自分を守る』ことのいかに難しいことか。この映画からは、でもそれでもいいのだ、不器用でも瞬間でも輝けるように生きるのも一つの生き方なのだ、という監督のやさしさが伝わってくる。
ボクサーとトレーナー(イーストウッドさん)と、それを見守る老職員(モーガンフリーマンさん)。3人が3人とも抱えた傷があって、その気持ちがこころにしみていく。3人いなければこの物語の伝えたい思いは伝わらなかっただろう。いい話だ。
主人公二人が、よしこれから頑張ろう、と握手する、そのシルエットが最高にかっこいい。重い映画だけれど、見終わって思い出すのはその希望に満ちた一瞬の風景だった。