「サイドウェイ〈特別編〉 [DVD]」

モテモテでとってもスケベな半端な俳優と、バツイチのいじけた売れない作家(と名乗る英語教師)。実に分かりやすいデコボココンビのロードムービー
どこか人間性に問題を抱えていたり、精神的に病んでいたりする人が旅をする中で変わっていくのはよくあるパターンだが、この映画は、旅が終わっても特に二人の中で何が変わるわけでもない。終わったんだなという諦めのような、はっきりした区切りだけを感じることができる。考えてみれば、旅をして何かが変わることなんて、そんなにないだろうというのはとてもよくわかる。だからこそ、ご都合主義的に主人公たちの身ががらっと変わるようなことがないのが、なんだか現実的で、逆に共感できておもしろかった。
旅をしながらも常にワインを飲んでいる二人だが、特にいじけて酔って駄目になってしまう作家の男の言動はあまりにも自分の身に覚えがあってみていて辛い。でも辛いだけにしないのがまたこの映画で、極端な自虐っぷりを見せてくれて笑わせてくれるあたりがよい。わかりやすい筋立てとキャラクターのわりに、そのあたりのバランスが、つまりすぱっと黒か白かで切ってしまわないような、どっちつかずにしておくあたりが、とてもうまく作られているのかもしれないと見終わって少しして思った。笑いも、シリアスなところも、やりすぎないで適度だ。
会話が楽しそうで、ワインがうまそうで、最初から最後まで陽気な音楽とともに雄大なカリフォルニアの風景が楽しめる。旅に出たい気分のあなたにどうぞ。これはいい映画だ。