パオロ・マッツァリーノ「反社会学講座 (ちくま文庫)」

文庫化されたので購入。さすがに評判になった本だけはあって、おもしろい。
社会学というのが、いかにどんなことでも主張できてしまうのかということを、真面目な話題も不真面目な話題もともに入れ込みながら面白く述べていく。とはいえ、どんなに物事を資料から調べるのが面白いという人でも、ここまできちんと調べて本という形にするには、それなりの社会学的素養とやらが必要なのかもしれない。
この本の著者の信用できそうなところは、金持ちに厳しく、将来ある貧しいものにやさしいこと。その差を少しでもなくすことが学問の役目だというスタンスが、ひねくれた口調からも伝わってくるところが、いい。著者のする、いかにして、勝ち組みで金持ちの人から貧しい若者へお金などを還流させるか、ということに関する提案は、真剣に考えてもよさそう。
もう一つ著者がいいスタンスだなと思うのは、人間が『いいかげん』でしょうもない存在だということを心から認めて慈しんで、それを前提にして社会学を考えていること。自分が地位もある立派な人間だからといって、みんなにそれを求めちゃいけませんよな。談志さんじゃないけど、そのいいかげんな人間の業を肯定することから、考えをはじめる人のほうが信じられる。
こういうのを読みなれた人にはそんなもんかと思うかもしれない。個人的には、高校生くらいのときに読めていたらと思った。