山折哲雄「早朝坐禅―凛とした生活のすすめ (祥伝社新書)」

教えること、裏切られること―師弟関係の本質 (講談社現代新書)」がとてもおもしろかった、宗教学者の著者による勝手禅のすすめ。
朝起きて一人で座ってみる。一人で散歩してみる。禅のように清い気持ちになどならなくても、妄想を抱きながらでも良いから、一人で自分と向き合ってみる。そこから生まれる凛とした気持ちがあるという。
誰しもそれなりに思い当たりはありそうだ。一人で歩くと見えてくるものがある。一人で目を閉じてただ座っているだけでも思いがどんどん深くなっていき、落ち着いてくることがある。そういう誰でもときどき無意識にやっている瞑想のようなものを、著者は意識して生活に取り入れたという。宗教者たちも、一人で座り、一人で歩いて自分の考えをまとめていった。そういう例と、一度は鬱に陥ったという著者の経験は、読むものに、少しでも良いからやってみようか、との思いを抱かせるに十分だ。
老いや死を考えるヒントにもなると思う。この本を読んでいると、断食往生が魅力的に思えてきた。成し遂げるにはそれなりの修業が必要そうだが。