長山靖生「奇想科学の冒険―近代日本を騒がせた夢想家たち (平凡社新書)」

前にこの著者の書いた「いっしょに暮らす。 (ちくま新書)」を読んで面白かったのと、この本で紹介されている人をあまりにも知らなかったので一つ読んでみることに。
この本では、明治から昭和初期にかけて発明や珍学説、空想小説などを発表した人物とその発想にスポットを当て、奇天烈すぎてもはや忘れられつつあるそれら「奇想科学」とでも呼ぶべきものから学ぶべきものがないかを考えていく。
トータルとしてまとまりがあるわけではないが、何せ出てくる人が面白い。また、どの人も、森鴎外など誰もが知っている偉人とのつながりや同時代に生きているからこその論争などがあったりして、それもまた興味をひきつける。
最終章まで読むと、著者がこの本を著すに至ったきっかけなのかな、と思える人物が登場する。彼は、バナナの皮から酒を作ってしまうという奇人の発明であり、苗字が示すとおり著者の近い親戚なのである。彼のことを述べる文章をよんではじめて、著者がこの本を書いた動機のようなものがはっきり見えて、この本に出てきた全ての愛すべき人々をわざわざ取り上げた理由が分かった気がした。
エネルギッシュで、自分の哲学に素直に未来を描いた人々への招待。おもしろかった。