スタンダール「赤と黒〈上〉 (岩波文庫)」

昨年読んだ「カラマーゾフの兄弟」に引き続いて、「いまさら名作を読む」第二弾。
仕事も大事だ。人のためにするべきことをするのも大事だ。では自分のために、今触れたいもの、したいことは?と考えたとき、どうしても最初に出てくるのが本だった。無趣味な自分が情けない。
そこで、せっかくならいまさらでもいいから少し読み応えのあるものを読もう、ということでとっかかりのあるところからはじめてみる。
まずはフランス文学の名作、青春と恋愛の「赤と黒」から。
少し前に読んだ長谷川宏さんの本で、「小説を通して生き生きした魅力あふれる人間と触れる」という話の中で詳しく紹介されていたもの。その本を読んだ感想のところには書かなかったが、著者がこの本について熱心に語ることといったら。これで読まなきゃどうするんだとひさびさに身体がうずいた。
ちょうど上巻を読み終わったところだが、遅かったかもしれないが、今読んでよかった!と思った。本は、特に名作だの古典だのといわれているものは、無理やり読むものではやっぱりないな、と。自分の心が求めるとき、答えを探しているとき、共感したいとき、そういうときが読みどきなのだ。貧困から身を起こし、恋愛をしながら世に名をなそうとする主人公ジュリアンの気持ちがびしびしとくる。
主人公の中にある、仕事に関して、うまく立ち回ろうとする心と、どこか率直で誠実でありたい心。また恋愛に関して、利己的で計算高くなる心と、何の計算もなく愛してしまう心。その両方が存在するのが当たり前で、その振幅こそが人間の魅力と幅を決めるのだろう。
ちょうどジュリアンがパリに旅立つところで終わる上巻。スピード感がでてきて、読む気持ちも前のめりになる。びびらずに下巻も買っておくのだった。