三浦しをん「秘密の花園 (新潮文庫)」

これを機会に読んでみましょうということで。
カトリック系女子高校に通う三人の少女のそれぞれの視点から書かれた三章からなる、帯に書いてあるとおりの「青春小説」。
女子高といえば一方であっけらかんとした雰囲気(「スウイング・ガールズ」のような)を想像するが、もう一つ確かにあるだろうなと想像できる雰囲気がこの本にはある。それぞれが秘めた思いを持ちながら、互いに牽制しながら、それぞれ生きていくようなほの暗さ。
大勢の中の、でも一人でしかないわたし。青春期のそれをかろうじて成り立たせている思い。男である自分には女子高のことなどわかりようがないが、その少し暗い感情のようなものはとてもよく分かるし共感できる。
そういう感情を吐露する小説というのは、わたしがわたしが、となってしまい、とても読めないものになりかねないように思うのだけれど、この小説はそれぞれの気持ちとはまた別にある少女たちの会話や周囲の人間(特に女の先生)の存在感が感じられて、面白く読めた。