湯浅浩史「花の履歴書 (講談社学術文庫)」

草花は人々の心に潤いを与えてくれる。季節によっても違うが、少し道を歩いているだけでも、一般家庭では実に多くの種類の草花が育てられていることがわかる。
よほど自分で調べようと思わない限り、それらの花の名前がほとんど分かるという人はそういないだろう。しかし、調べてその名前を知るだけでも、私たちがそれらを見る目は全く変わってくる。この本は、季節ごとに分けて日本で栽培されている代表的な草花の名前を解説してくれるだけでなく、その「履歴」をも分かりやすく教えてくれる。
考えてみれば当たり前なのだが、栽培されている草花は昔からそこらに生えていたとは限らない。日本にある花の多くは外国からある時期に持ち込まれたものである。またさらに昔にさかのぼると、外国でそれらの花を見出し、栽培してみようと思った人間たちがいる。それ以来、多くの育種家たちが、花の色や形をさまざまに改良してきたのが今、一般家庭の庭先や花屋にある花の姿なのだ。
とてもポピュラーな花が、実は最近見出されて持ち込まれたことを知ったり。なんであれ歴史を知るのは、今あるものをより深く理解するのにとてもいいことだ。
一つ一つの項が見開き2ページずつ。字数制限の厳しいなか、歴史(は昔の本の記載まできちんと調べられている)と特徴だけでなく栽培法まで盛り込んだのは名人芸としかいいようがない。ぱらぱらめくって読むのも楽しい一冊。