本多勝一「日本語の作文技術 (朝日文庫)」

言わずと知れた文章術の名著に手を伸ばす。いかに、日本語の文章を「わかりやすく」書くか、ということについて解説された本である。
最近ことにいかんなと思うのは、英語で論文なりを書くときには丁寧に一語一語のつながりや意味を確認するのに、日本語となると無意識に手を抜いて書き散らすようにしてしまうことである。英語を書くときは、誤読のない、一義的な文章となるように細心の注意を払う。同じことをなぜ日本語のときにしないのか。自分がいつも使っている言葉だから、という驕り以外のなにものでもない。
そもそも、著者も書いているが、日本語はロジカルなことを書くのに適さない、ということはない。ロジカルでない日本語を書いているだけなのだ。英語に対するのと同じくらいの意識を持って、日本語の一語一語に対するべきなのである。
本の後ろにも書いてあるように、『第一章から第四章まで読めば、それだけで確実に、文章は良くなる』。これは間違いないと読み終わって感じた。修飾の順序はどうあるべきか、句読点はいかに打つべきか。それだけを意識するだけでも、分かりにくい文章は劇的に減るだろう。意識すればできることを、いかに普段意識していないかを改めて反省したい。
英語の文章術について書いたときにも感じたが、英語も日本語も、分かりやすい文章にするために意識せねばならない点は非常に似ている。結局は、「誤読されやすいような言葉の並べ方を避ける」「一義的に書く」ということである。これらをとことん意識している人間は、英語と日本語の両方について、母国語だとかそうでないとかに関わらず、わかりやすい文章を書けるのである。
この本を読み返して、少しでもそうした地点に近づけるように頑張りたい。