山田政弘「エッジ・ワーキング (ソフトバンクビジネス)」

新入社員として入社してすぐ、即戦力の仕事を求められるコンサル業界。『入った途端、意味不明の単語とともに、期限を決められて仕事をしろと突き放され、成果を求められる』…そんなベタなイメージ通りのことが行われ、そして、

プロとしての意識を持った上で、今の自分に何ができるのか。そのことを常に考えさせられるのがコンサルティングファームなのだ。(p23)

のだと著者は言う。しかし、そうした環境で鍛えられるからこそ、仕事面での成長もあり、『即戦力』で『差別化された』人間となっていくのだそうだ。
そうしたコンサルティングファームで生き残って結果を残していくためのノウハウを披露した一冊。
コピーの仕方、議事録の取り方から、メール、スケジュール管理、プレゼン資料作成、果ては合コンの戦略に至るまで、あらゆる面での細かい、コンサル風の仕事術がこれでもかと詰め込まれている。
若干説教くさいが、社会人としてこのくらいはさらっと自然にできたら確かにいいな、と思える実践的な本。どちらかといえば、新入社員向けに書かれているような印象を受けた。新しい仕事で自分に自信がつかないとき、でも誰かが教えてくれるわけではないとき、そんなプレッシャーを少し和らげてくれるアドバイスが満載である。
それにしても。役に立つことは役に立つと思うのであまり悪く言いたくないのだが、読んでいて違和感がぬぐえない点がある。それは、コンサルは特別な仕事なのだ、高い給料をもらえるのは当然なのだ、駄目なやつは辞めさせられるのだ、という著者の自負がそれとなく…ではなくビシビシと伝わってくるところである。仕事にそういう面があるのも分かるし、コンサルがそういった仕事の仕方を最も得意とすることも分かっている。それでも、著者が最後のほうで書いているように、コンサルで働く人の持っているような『分類思考』『ロジカル思考』には、普通に接していて鼻につく面もあるだろうなと感じる。それに、そういう思考が必要なのは決してコンサルだけではないはずである。それなりに仕事をしてきた人には、読んでいて、「このくらい仕事をするにあたっては普通のこころがけであって、ことさらに強調するほどではない」と思う人も多いはずだ。
最後に合コンにも役立つコンサル仕事術、を載せてしまったのが決定的。これを読んで、ふーんやってみよう、コンサル仕事術すごいぜ、と思う人がどれだけいるのか。私は、そういういらない自負を持つ人間のことがあまり好きではないので、正直なところ冷静に書けない。しかし、もう少しいろんな仕事をしている人がいるのだということに配慮があってもよかったように感じた。
そのへんを割り引いて、このくらいできておくと新入社員としてはいいかもな、という気分で若い人が読む文にはいいだろうと思う。

エッジ・ワーキング

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