外山滋比古「思考の整理学 (ちくま文庫)」

こういう本が平積みになっていると、購買欲をそそられる。
読み終わってから気づいたが、20年も前からちくま文庫に入っており、かなり長く読み継がれてきたようだ。まるで古さを感じない。それほど、普遍的なことを言っている本なのだと思う。
技術開発でも研究でもいいが、何かを自分で生み出していく人にとってヒントになるアイディアが満載。『アイディアは寝かせておく』とか、知識を得るために本をどうやって読んでいくか、とか、多くの人が多くの本に書いていそうなことが、格調がありながらも読みやすい文章で書かれている。こういう本をたくさん書いている偉い人であるだろうに、文章から感じるこの易しさと親しみやすさはなんだろう。
中に、作品や考え方は時間の持つ風化作用をくぐりぬけて古典となる、という文章がある。まさにこの本は、思考法、発想法のエッセンスが凝縮して書かれていることで、20年の時間を感じさせない古典となっている。これを読んでじっくり「いかに新たな発想を得てそれを形にするか」について自分でいろいろ考えることになった人もまた、自分の頭の中に風化しない思考法と発想法の極意をインプットすることができるだろうとおもう。

そうして古典的になった興味、着想ならば、かんたんに消えたりするはずがない。
思考の整理とは、いかにうまく忘れるか、である。(p127)

そういう言い方があるのか!と手を打つ一文。