竹内洋「丸山眞男の時代―大学・知識人・ジャーナリズム (中公新書)」

大学に入ってから、さまざまな本を濫読してくると、いろいろな人の名前に出会う。そんな際、戦後の政治学などについての文章を読む機会があると、頻繁にその名が挙がるのが丸山眞男であった。しかし、彼がどういった主張によってその名を残したのか、どのような影響を戦後日本に与えたのか、については全く無知であった。彼について書いた本も、彼が書いた本もたくさんあったというのに。
というわけで読んでみたこの一冊。著者の竹内洋さんの本は読んだことがあった。教育や大学、教養について考え、その問題意識を提示しておられる方だ。その著者が、東大法学部教授として戦後日本の大学に君臨した丸山眞男の学問の問題意識の背景を、その時代の様子とともに見せてくれるのがこの本。学園闘争も何もない時代に生まれ、理系の学問を学んできた自分には、この本で描かれる、丸山眞男を通した戦後の政治の流れ、動きは実にわかりやすかった。現在にまで、変わりながらも続いてくる政治的な立場だとかの基盤がさーっと目の前に開けてくるようなわかりやすさがあった。政治学や文系の学問に慣れた(この本で言う「インテリ」の)人には当たり前なのかもしれないことを、ここまで面白く読めたのは何よりの収穫。
この本を読んでわかったことや、丸山眞男の考えなどはまだ噛み砕いた形で整理できないので書かないが、大学(すなわちアカデミズム)の権威とは。丸山眞男が東大の教授であった時代とどのようにそれが変わってきたのか。そしてジャーナリズムとの関係はどのようなものであり、どう変わってきたか。そういった問題への入り口として、これ以上手軽でわかりやすいものはなかなかないかもしれない。
ある人の生き方のスタイルやその人の主張には、どうしてもその人の生まれた時代や心の痛みなどが反映されてしまう。そういうものを見せてくれる評伝やノンフィクションは、難しいことを考えなくても実に面白いものだ。おすすめ。