「かもめ食堂 [DVD]」

ふと借りて見てみた一本のDVD。これがまたいい雰囲気で、寝る前にうつらうつらと見るには極上の映画。
小林聡美演じる主人公がフィンランドの街角で開いた「かもめ食堂」。異国の地の新しい食堂にさまざまな縁で現れる日本人と現地のお客さん。その距離感がたまらない。
ずっと変わらないでいる人間などいない。どんなに仲がよい二人でも、その関係は常に変容していき、ずっと同じではいられない。
主人公はそうした人間関係の変容や別れを何度となく受け止めてきたのだろう。仲良くなった日本人の客人に対しても、もし別れることになっても寂しくないし彼女らの選択を心から喜びたいと爽やかに話す。
でもそれは、冷たさとはちょっと違う。いつでも、どんなに互いの関係が変わってそこを訪れても、彼女が同じような笑顔で迎え入れてくれるだろうなという安心感や包容力(それは映画を見ている人の多くが主人公から感じることができるだろうと思う)とセットになったクールさだ。かっこいいじゃないか。
分かっていても、なかなかそのように人と接することはできないものだ。損得がある人間ならそのような態度になってしまうし、今の自分の生活と相手の生活が縁遠いものになればなるほど、「関係ないさ」ちう態度は表面にでてしまう。いつでも同じ笑顔で受け止められるためには、人間としてのふところの広さを持っているかと一本芯の通った生き方ができるかが問われるだろう。
さまざまな人と人との関係があり、それが変わっていく中で小さな軋轢やらが生じているだろうなかで、一つのさわやかなつながりかたを鮮やかに見せてくれた気持ちのいい映画。フィンランドの景色も、寒そうだったりもするものの美しい。
ふと、この映画について書いていらっしゃるかたに触発されて書いてみました。なるほどと思わされるのでぜひそちらもご覧になってください。
http://d.hatena.ne.jp/matsuiism/20070125