「パッチギ!」

お正月休みに、デジタル放送で見た。これは面白い!
政治的な、ある意味繊細な問題を、テンポ良く笑いを交えながら見せてくれる。悲しいけれど、すっきり見られる、井筒監督の真骨頂。サッカーW杯のときに、井筒監督がジダンの頭突きにやたらとこだわっていたのは、是非こそあれ、まさにこの映画を作った彼ならではの賞賛をどうしても伝えたかったのだな、と今さら合点がいった。
現代の若い俳優が演じているのに、昔の映像を見ているような気にさせてくれ、その世界にのめりこむように見えることができた。いまさらながらの傑作。
暴力的なシーンを見ていてこんなに悲しくなるのはなぜだろう。人間にはいろいろな悲しみの表現の仕方があるけれども、涙を流す以上に暴力が悲しみを伝えてくれることがある。「イムジン河」のメロディーとあいまって、若者どうしが殴りあうシーンのなんとも言えない悲しさといったらなかった。そう思ってみていると、笑えるシーンすら悲しく見えてくるから不思議だ。
暴力と笑い抜きで無難に泣かそうとする映画なんてなかなかできるものではないし、そんなに面白くもない。むしろ、暴力と笑いがあって、その裏にある悲しみが余計に伝わってくるものじゃないか、と思う。