長谷川眞理子「ダーウィンの足跡を訪ねて (集英社新書)」

ダーウィンの足跡を訪ねて (集英社新書)
観光の際、その土地で生まれ、あるいは活躍した偉人の足跡をたどるのは楽しいものだ。鹿児島なら西郷さんが最後を遂げた洞窟などをまわったり、福島なら野口英世の生家を訪れたり。青森なら太宰治だろうか。人それぞれの興味や思い入れによって、ゆかりの地をたずねてみたくなる歴史上の人物は変わってくるだろう。
さて、イギリスといえば誰のゆかりの地を訪ねるだろう?ビートルズとかシェークスピアあたりが有名なところかもしれないが、生物学者の著者にとってこの人を外せない、というのが、本書で自らそのゆかりの地を巡り紹介してくれるダーウィン先生である。
ダーウィンって、あの進化論の人?古いんでしょう、それって、というくらいが普通の反応だろうか。
それはそれでもいいのだけれど、実はこの人の提唱した「進化」という生き物の見方というのは、150年も経つ現在に至っても生き残り、常にその価値が見直されつづけているのである。常に新しい考えが生まれてはすぐに古くなる科学の世界で、この長寿ぶりと大事にされぶりはなかなかのもの。この本からだとそのあたりは分からないが、もし興味のある方は同じ著者の下の本などをぜひ。案外すごいのだ、ダーウィン先生は。

進化とはなんだろうか (岩波ジュニア新書 (323))

進化とはなんだろうか (岩波ジュニア新書 (323))

それにしても、時代が時代というのもあったのだろうしイギリスという土地もあるのだろうが、ダーウィンの一生をその暮らした土地とともにたどるとき、教会や神学関係とのつながりもやはり多いことに読んでいて気づかされる。ビーグル号に乗る前の彼がなる予定だったのが国教会の牧師であったことや、死して国教会の寺院に葬られた事実を知るにつれ、そんな時代に進化論という世間の常識と真っ向から反抗することを主張していったダーウィンの気遣いと苦労の多さを想像せざるをえない。
写真満載、進化論を全く知らなくても楽しめる。