身体で紡ぐ歌

週末に、Coccoのライブをテレビで見た。
もしもぼくが女性のシンガーソングライターだったら、あの人がライブで歌っているのを見たら、「絶対この人には勝てないなぁ」と思うに違いない。
歌の上手い人はいくらでもいるのだ。ただ彼女は、カイコじゃないけれども、体中から歌が紡ぎだされているような、そんな感じがする。沖縄の、青い空ときれいな海に流れる民謡に浸りながら大きくなってきた彼女の歌は、彼女の生き方そのものがそのまま出てきているような、生身の迫力がある。生で見たらまた感じるものが違うだろうけど、テレビでもじゅうぶんに伝わってくる。
ライブのMCで泣いているCocco。それぞれの人の苦労とか悲しみとか嬉しさなんてわかりようもないが、的外れを覚悟で好きなように書くと、ぼくはその姿に、少し前にリーグ優勝を決めて涙ぐんでいた落合監督を思い出した。
誰にも分かってもらえないように感じることもありながら、自分の一番得意で好きなことを続けていて、それが誰かに助けてもらえて、さらに誰かに支持して喜んでもらえる…その嬉しさというのは何にも替えがたい。もう手に入っていることもあるかもしれないし、実際に見つかっていないのかもしれないけど、人はその充実感を求めてやまない。そんな感謝の気持ちで涙を流す人の姿こそが、心を揺さぶるのかもしれない。
でも求めて手に入れられるものでもないのがまた、難しいところだよな…ととりとめもなく考えて、グラスに残ったチューハイを飲み干す。さてがんばるか。