自分で自分に締め切りを

知人から個展のお知らせが絵葉書で届いた。
アーティストだからといって、個展を開く必要なんてない。もちろん個展には、自分の仕事を見てもらって、使ってもらえる人がいないか営業するという意味合いがあるので、開くことには大きな意味があるだろう。でも、誰に使われているわけでもない(会社と契約は実際のところしているのだろうけど)個人事業者である彼女は、自分で「いつころ個展をやるぞ」と決めない限り、個展を開く義務なんてないはずなのだ。なんたって、個展のために新作の絵を書かなければならない。それもそれなりの数と質で。それはそれはたいへんなことだ。
いつまでに何をしなさい、と決められるサラリーマンではない仕事をしている者は、アーティストと同じように、「自分で自分に締め切りを作らねばならない」のだな、と当たり前のことを改めて思う。それは、頼まれたり期限を人に切られたりする仕事とは別に、である。
画家なら、誰にも頼まれない絵をいつまでにどのくらい描こう、と自分に課せるか。シンガーソングライターなら、なんのタイアップもつかない曲を普段それなりに作っておけるように、自分を律せられるか。科学者なら、資金のつかない研究で論文を書けるか。小説家なら、連載以外に長編を書けるか。
もし、人に頼まれた義務の仕事ばかりしているとしたら、無理やりでも自分で自分を律するような仕事を作るべきだ。その蓄積が、将来の伸びしろになるのだろうと思う。
…そんなことを考えていると、個展を開けるほどまでにきっちり自分を律して仕事をしていた彼女の見えない努力に感服するとともに、少しでも見習いたいな、とやる気が出てきた。
どれだけ自分のペースを保って、でもそれなりの締め切りを見据えながらできるか。ずっと考えていきたいテーマだ。