立場や地位がなくなる空間

人と飲んでいてどういうことが楽しいかって、相手が真剣に仕事をしている姿が全く想像できないときだ。
職場の人や、同業者くらいだと、だいたいやっていることも、日々どういうことで苦労するかもだいたい想像できる。生きている間の半分以上を占める、働いている、という時間にその人がどのような顔をしているか、どういう気持ちを抱えるか、おおよそわかるわけだ。
ところが、デスクワークの人、営業の人、野外が主戦場の人、自分の力だけで何か人に訴えるものを生み出す人…それぞれに全く自分とは別な世界で仕事をしている人というのが存在する。個人的に親しくて、どんなにその人のことを知っていようとも、彼彼女が実際にどう日々仕事と向き合っているか、は見えない。
逆にそれが、誰かと飲んで話すときの一番の魅力なのだろうなと思う。各自自分の仕事の話をしたとしても、それに、目の前にいてわーわーとくだらないことを話している人が実際に関わっている姿を重ね合わせるのはとてもむずかしい。
毎日どのように自分の果たすべきことと向き合っているかは、それぞれの人の話す、それぞれの仕事とは全く関係のないくだらない会話の裏側だけに出てくる。
そういう、仕事上の立場だとか得ている地位だとかがなくなる空間が、とてもすきだ。