芦田嘉之「やさしいバイオテクノロジー 血液型や遺伝子組換え食品の真実を知る (サイエンス・アイ新書)」

自分のために、というよりは、他人におすすめできるバイオテクノロジーの入門書がないかと思い、読んでみた。
どのように染色体が分かれて受精卵がDNAの構造、遺伝子とは何か、タンパク質がどのようにできるのか。こういった分子レベルの仕組みを前半で説明した上で、血液型や、遺伝子診断や遺伝子組換え、クローンなどのバイオテクノロジーに関する特に誤解を生みそうなわかりにくいトピックについて図解つきで解説。
おそらく前半の分子レベルの仕組みは、高校の生物をやったことがある人でもないと、さらっと一読では頭に入らないだろう。図解も特別にわかりやすい工夫がこらしてあるわけでもなく、一つ一つの事項も細かいので若干難しい。
しかし、著者はそれでもいいと考えているふしがある。そうした事項を読んだ上で、血液型や遺伝子組換えについてのさまざまな話題に触れてもらうことで、「ゲノム」と「遺伝子」が違う概念であり、それが区別されていないところに多くの誤解があることをわかってもらおうとしている。
実際、「ゲノム」と「遺伝子」の違いについてはいくつかの例で繰り返し説明しており、面白い目のつけどころだと思った。
他にも、「遺伝子くみかえ」をどう書くかについてのトピックも面白い。すなわち、「組換え」は科学者・政府機関・法律用語、「組み換え」はマスコミと多くの反対している人、「組み替え」は一部の市民運動家、が使うことが多く、科学的な正確さはこの順になっているとの指摘だ。
純化しすぎているところはあるとはいえ、確かにそうかもなと思ってしまうところがある。「組み替え」はさすがにないなぁ。
入門書とはいえ、好きに書いているなという印象。個人的には面白いが、最初の一冊としては少しためらわれるかもしれない。