「おくりびと」

本木雅弘が納棺師を演じる映画を、映画館で見てきた。
なにがいいって、納棺師という仕事の細かい所作が、この映画を引き締めている。もちろん父と子とか、死に向き合う人々の姿とか、心揺さぶられないわけではないのだけれど、そういうものを描いた物語や映画はたくさんある。ただ、そういう死を前にしたシーンにおいて、死者を丁寧丁寧に送り出そうとする仕事をただ静かに見せられるのは、それだけで何とも言えない説得力がある。確かに、この仕事ほど、お客さんに複雑な思いで自分のやっていることを見つめられる仕事はそうないわけで、それを意識しながら一つ一つ心を込めていくのは、プロながら何とすごいことなのだろうと思う。こちらの本でもあったような、死を扱う仕事への根深い偏見も描かれているけど、それらは彼らの仕事ぶりを見ていることでいつのまにか人々の頭から消えていく。物語としてとても面白い、すばらしい、というほどではなかったように思うが、役者さんたちがこの仕事を説得力を持って見せてくれただけでも、この映画を見る価値はある。
どうも女性には広末涼子が甘ったるく見えるのだろうか。確かにそういうところもあるのかもなと思いながらも、個人的には彼女の、主人公を見つめる目がとてもよかった。見守る妻という役がとてもうまいなと感じた。