「情熱大陸」漫画家・桜沢エリカ

実は彼女の作品は読んだことがない。今度読んでみよう。あちこちのブログで「セレブだなぁ」という感想があったが、ぼくは特に手の届かないゴージャスさだ、とは思わなかった。継続して仕事をしているものの芯の強さのようなものは見えたけど、その生活ぶりは実に無理がなく、自然に見えた。生活ぶりは確かにうらやましいものであるかもしれないが、決して、威張らない。それを支える専業主夫の夫とともに、まるで地味な芸術家のような堅実さが印象に残った。
中盤で、岡崎京子と比較されてきたこと、についてさらっと触れられていた。
関川夏央さんなどもすごいと書いているように(「本よみの虫干し―日本の近代文学再読 (岩波新書)」)、マンガの枠をこえて文学の人にまで影響を及ぼした岡崎京子と比べられてきたのは複雑な思いだったろう。昔の雑誌の対談で、「作り物の話こそを書きたい」という岡崎京子と、「自分の恋愛観そのものを書きたい」という桜沢エリカ。そして今、私は彼女のような天才ではない、という桜沢エリカ。比較されてきながらも、コツコツと自分のできることを、自分のスタンスを崩さずにやってきた、という自負がそこにのぞいた。そして自分だけが描き続ける状況になった今、彼女は何を思っているのだろう。やはり、自分は自分だ、という思いだけだろうか。そう思っていても、どこかで、影響されてしまうのが同世代の同業者、ライバルというもの。
同じ時期から活躍していた二人でありながら、桜沢エリカの価値観としてマンガの一節から紹介された『お金で買えるものは欲しくない』…は、まるで岡崎京子の「pink (MAG COMICS)」(ひりひりくる物語。おすすめ)の主人公と逆のことを言っている。でもきっと、二人はどっちも同じことを描こうとしているのだろうな。一方は悲劇とかファンタジーとかの作り話という形をとって、もう一方は自分のまさに実感を素直に表わすという形で。

pink (MAG COMICS)

pink (MAG COMICS)