木村俊介「「調べる」論 しつこさで壁を破った20人 (NHK出版新書)」

インタビュアーの達した一つの結論として、これほど「話を聞くこと」「話をすること」の面白さに迫ったものはないかもしれないと思った著者の言葉から。

「相当な大物であっても、話が目の前の人にも興味深いものかどうかと不安を感じがちである」(p268)

東大立花隆ゼミ、ほぼ日刊イトイ新聞で活躍されてきた著者が、さまざまな分野の人々の仕事のしかたに「調べる」という観点から迫ったインタビュー集。
個人的にその本を実際に読んだことがある人の、本には書いていない本音みたいなものが垣間見えて、とても興味深い内容となっている。それは例えば、『自分の議論は我ながら細い線を辿っているなとも思う。(p66)』と語り、その主張への批判の苦しさを話す本田由紀さんであったり、データの取り方やその伝えかたを中心に研究について深く語ってくださっている佐藤克文さんであったり。
さらには、そうした自分の仕事のやりかた、葛藤などについて話されるとともにポロリと漏れてくる仕事上の名言のようなものが、とてもいい。人の話を聞く時に、「評価をせず、整合性も求めず、まるごと話を聞き続けることが大事」と語るグリーフケアワーカーの?木慶子さん。医師に大事なコミュニケーションとして、『相手にとっての聞きたいことを想像すること(p88)』を教わったと語る内科医の本田美和子さん。仕事のストレスを、仕事自体で解消できるのが嬉しいと話す漫画家の東風孝広さん。どれも、ひとしきり話をして、話が熟してきたとも言える後半に出てくるのが印象的だ。
著者自身が、「調べる」「話を聞く」という自分の仕事と重ね合わせるように聞いていく話のなかで、そうしたことの極意のようなものがさまざまなプロフェッショナルから語られる。話を聞く人々の仕事は別々だが、一本筋が通るテーマのために、一つの本として面白くよめた。